福祉専門職員配置等加算は、有資格者の配置と常勤職員の定着という二つの軸で事業所の体制を評価する加算です。仕組み自体はシンプルに見えますが、判定の場面では「常勤のうち」と「常勤換算数のうち」の母数の違いや、兼務職員・非常勤職員の取扱いで迷いやすい論点が複数あります。
要件の見落としや母数の取り違えは、後日の運営指導や実績確認の場面で算定誤りとして指摘される可能性があり、加算額の返還につながることもあります。本記事では、区分ごとの要件を整理した上で、自所の職員配置に当てはめるときに混乱しやすいポイントを取り上げます。
1. 福祉専門職員配置等加算とは
就労継続支援A型・B型、就労移行支援、就労選択支援、生活介護、自立訓練など、多くの障害福祉サービスで算定可能な加算です。対象となる「直接処遇職員」(生活支援員・職業指導員・就労支援員など)の具体的な範囲はサービス種別ごとに異なるため、自所のサービス類型に合わせて告示でご確認ください。
3 区分の概要は次のとおりです。
| 区分 | 評価軸 | 単位数の目安 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 有資格者の配置(常勤の中で35%以上) | 15単位 |
| Ⅱ | 有資格者の配置(常勤の中で25%以上) | 10単位 |
| Ⅲ | 常勤職員の定着(2基準のいずれか) | 6単位 |
単位数はサービスによって異なる場合があります。最新の告示でご確認ください。
Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ のいずれを算定するかは、事業所の人員構成によって決まります。有資格者を厚く配置できている事業所はⅠ・Ⅱを、常勤化や勤続年数の長さを強みとしている事業所はⅢを目指す、というのが基本の整理になります。両方の要件を意識しながら、無理のない区分を選ぶのが安定運用の出発点です。
なお、福祉専門職員配置等加算は、それ自体が加算単位を生み出すだけの加算ではありません。令和8年6月施行の処遇改善加算では、加算Ⅰ(Ⅰイ・Ⅰロ)の追加要件として「経験・技能のある介護職員」(キャリアパス要件Ⅴ)が設定されており、このキャリアパス要件Ⅴは、福祉専門職員配置等加算を算定していることをもって満たす要件です。
そのため、福祉専門職員配置等加算を算定できていれば処遇改善加算の加算Ⅰまで取得可能となる一方、福祉専門職員配置等加算を算定できない場合は、処遇改善加算は加算Ⅱ(Ⅱイ・Ⅱロ)以下にとどまります。
ここでのポイントは、福祉専門職員配置等加算がⅠ・Ⅱ・Ⅲ のいずれの区分かではなく、区分の上下を問わず算定できる体制が整っているかどうかです。区分Ⅲでも算定できていればキャリアパス要件Ⅴを満たすため、処遇改善加算 加算Ⅰの要件をクリアできます。人員配置の判断は、福祉専門職員配置等加算と処遇改善加算の要件をセットで見ておくと整理しやすくなります。要件の詳細は最新の告示・通知でご確認ください。
2. 区分ごとの要件
2-1. 区分Ⅰ・Ⅱ ― 常勤の中での有資格者割合
区分Ⅰ・Ⅱは、常勤の直接処遇職員のうち、有資格者の割合で判定します。Ⅰは35%以上、Ⅱは25%以上です。母数となるのは「直接処遇職員として配置されている常勤職員の人数」で、非常勤職員はここでは数えません。
有資格者の範囲はサービス種別によって異なります。社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・公認心理師は全サービス共通で対象ですが、就労継続支援A型・B型、就労移行支援、就労選択支援では作業療法士も対象に含まれます。看護師・保育士・社会福祉主事任用資格などは原則として対象外です。
Ⅰを目指すかⅡに留めるかは、退職や採用の見込みも踏まえた判断になります。年度途中で有資格者が退職して割合が35%を下回ると、要件を満たさなくなり区分の見直しが必要になります。「念のため上位を狙う」という発想ではなく、年度を通じて維持できる水準で区分を選ぶのが現実的と考えられます。
2-2. 区分Ⅲ ― 常勤定着の評価
区分Ⅲは、有資格者割合ではなく常勤職員の定着状況で判定します。次の2基準のいずれかを満たせば算定できます。
- (a) 直接処遇職員の常勤換算数のうち、常勤職員の割合が75%以上
- (b) 常勤の直接処遇職員のうち、勤続3年以上の者の割合が30%以上
(a)は事業所の常勤化の進み具合を、(b)は職員の定着の進み具合を、それぞれ評価する基準です。両方を満たす必要はありません。
3. 「常勤のうち」と「常勤換算数のうち」 ― 母数の違い
判定でつまずきやすいのが、Ⅰ・Ⅱ と Ⅲ-(a) で母数の取り方が異なる点です。
- Ⅰ・Ⅱ — 母数は「常勤職員の頭数」
- Ⅲ-(a) — 母数は「常勤換算数」(非常勤も勤務時間に応じて含む総数)
母数を取り違えると、本来は要件を満たしていない区分で算定してしまうこともあれば、満たしているのに低い区分にとどまってしまうこともあります。判定シートを作るときは、区分ごとに母数を別欄として明示しておくと取り違えを防ぎやすくなります。
4. 取り扱いで迷いやすい3つの論点
4-1. 多機能型事業所では事業所全体で合算する
多機能型事業所は、就労継続支援B型と就労移行支援を一体的に運営するなど、複数の障害福祉サービスを一つの事業所として届け出ている形態を指します。福祉専門職員配置等加算では、サービスごとに別個に判定するのではなく、事業所全体の直接処遇職員を合算して要件を判定するのが原則です。一つの事業所として運営されている実態を反映した取扱いと考えられます。
ただし、サービスごとに対象資格が異なる点(就労系のみ作業療法士が含まれる等)は変わりません。合算判定をする場合でも、有資格者として算入できるかどうかは、その職員が従事するサービスに応じて整理する必要があります。
4-2. 兼務職員は業務時間の実態で判定する
ほかの職種と兼務している常勤職員は、肩書きではなく業務時間の配分実態で判定対象になるかどうかが決まります。たとえば直接処遇職員としての勤務時間が業務全体の2分の1を超えていれば、判定の対象に含めて差し支えありません。
兼務発令書や勤務シフトで、それぞれの業務に充てている時間が確認できる状態にしておくと、運営指導の場面で説明しやすくなります。
4-3. 非常勤職員の取扱い ― 区分によって含めるかどうかが違う
ここでいう「常勤」とは、就業規則で定められた勤務時間のすべてを勤務する職員を指します。雇用形態が正社員かパートかではなく、所定労働時間を満たしているかどうかで常勤・非常勤が分かれる点に注意が必要です。
非常勤職員(パート・アルバイト)の扱いは、判定する区分によって変わります。
- 区分Ⅰ・Ⅱの有資格者割合 — 母数は常勤の頭数のため、非常勤は含まれません。ただし、勤務時間が常勤と同じ所定労働時間に達している非常勤職員は、常勤として扱う運用がされる場合があります
- 区分Ⅲ-(a)の常勤換算判定 — 母数は常勤換算数のため、非常勤職員も勤務時間に応じて母数に含まれます
非常勤職員を含めるかどうかは、判定する区分と母数の定義に合わせて整理しておきます。
5. 区分判定前に確認しておきたい3点
- 対象職員と母数を、区分ごとに分けて整理する — Ⅰ・Ⅱ は常勤の頭数、Ⅲ-(a) は常勤換算数と、見ている数値が違います
- 有資格者の対象資格を、自所のサービス類型に合わせて確認する — 全サービス共通の4資格に加えて、就労系では作業療法士も対象になります
- 兼務・非常勤・多機能型などの取扱いを事前に整理する — 形式的な肩書きや配置ではなく、業務時間の実態と事業所単位での合算が判定の前提です
6. まとめ
福祉専門職員配置等加算は、区分ごとに母数の取り方が異なり、兼務・非常勤・多機能型など実態に応じた整理が必要な加算です。職員台帳と勤務記録、雇用契約書、資格証の写しを突き合わせて、誰がどの母数に入るかを区分ごとに分けて整理しておくと、年度を通じて安定した算定につながると考えられます。
人員構成の変動が大きい時期や、新たに有資格者を採用した場面では、区分の見直しが選択肢に上がります。届出のタイミングや必要書類は自治体ごとに運用が異なるため、変更を検討する段階で提出先のガイドラインを確認しておくと、後日の手続きがスムーズになります。
行政書士杉山翔事務所では、福祉専門職員配置等加算をはじめとする加算の区分判定や届出書類のサポートを承っております。「現状の区分から上位区分を狙えるか試算したい」「多機能型での合算をどう整理するか相談したい」といった段階のご相談も承っています。
ご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
※ 本記事は厚生労働省告示「障害福祉サービス費等の算定に関する基準」および関連通知における福祉専門職員配置等加算の規定、ならびに厚生労働省・こども家庭庁「令和8年度の障害福祉人材の処遇改善等の対応」(第53回 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料1、令和8年2月18日)を参照して作成しています。要件・対象資格・単位数の最新の取扱いや、自治体ごとの運用は、厚生労働省および各都道府県・市区町村の発表をご確認ください。