送迎加算は、成人向けの障害福祉サービスと児童向けのサービスでそもそも考え方が異なります。本記事は、成人向けのうち就労移行支援・就労継続支援A型・B型・生活介護等 を念頭に、送迎加算の基本構造と実務で押さえておきたい論点を整理しました。児童発達支援・放課後等デイサービスなど児童向けのサービスは別の体系で送迎加算が組まれているため、本記事の整理はそのままは当てはまりません。他の成人向けサービスでも、要件の細部はサービス類型ごとに異なる部分があるため、自所のサービス類型に対応する告示・通知をご確認ください。

1. 送迎加算の基本構造

1-1. 算定の単位

送迎加算は、利用者一人につき片道ごとに算定する仕組みです。朝の送りと夕方の迎えで別々にカウントされる構造のため、月単位の送迎実績が算定の根拠になります。令和6年改定後の規定として、単位数の目安は次のとおりです。

  • 送迎加算(Ⅰ)― 21単位 × 該当する利用者の数 × 片道
  • 送迎加算(Ⅱ)― 10単位 × 該当する利用者の数 × 片道

なお、同一敷地内の他事業所との間で行う送迎については、上記の70%で算定する取扱いとされています。最新の単位数や端数処理の細部は告示でご確認ください。

1-2. 区分Ⅰ・Ⅱ ― 二つの要件の組み合わせ

送迎加算は、二つの要件の充足状況で区分Ⅰ・Ⅱ が分かれる構造です。

  • 要件1 ― 1回の送迎あたりの利用者数(一定数以上)
  • 要件2 ― 1週あたりの送迎頻度(一定回数以上)

このうち、

  • 区分Ⅰ ― 要件1・要件2 のいずれも満たす場合
  • 区分Ⅱ ― 要件1・要件2 のどちらか一方のみを満たす場合

という組み合わせで判定します。区分Ⅰの方が単位数が高く、その分二つの要件をともに満たす必要があります。

2. 算定要件の中身

2-1. 要件1 ― 1回あたりの利用者数

要件1は、1回の送迎で何人を送迎しているかを月単位で平均して判定します。事業所の定員によって基準が異なる構造です。

  • 定員20人以上の事業所 ― 1回の平均で10人以上が送迎を利用している
  • 定員20人未満の事業所 ― 1回の平均で定員の50%以上が送迎を利用している

定員によって判定基準が切り替わる構造です。事業所の規模ごとに分母を確認したうえで集計します。

2-2. 要件2 ― 週3回以上の送迎

要件2は、週3回以上の送迎を実施していることが条件です。週ごとに送迎日数を集計し、3回以上の週が安定して確保できているかを確認します。週の途中で祝日が重なる場合や、利用者の急な欠席が続く時期は、週3回の確保が崩れやすいので注意が必要です。

2-3. 二つの要件をどう組み合わせるか

区分Ⅰを目指すには、要件1と要件2を月単位で同時に満たす必要があります。一方、片方だけを満たす月は区分Ⅱでの算定となるため、月ごとに区分が変動するケースもあり得ます。

「念のため上位を狙う」のではなく、月ごとの実績の見込みに即して区分を選ぶのが安定運用の出発点と考えられます。

3. 算定対象になる送迎・ならない送迎

3-1. 送迎の方法 ― 自社運営でも外部委託でも可

送迎業務は、事業所が直接行う場合だけでなく、外部の事業者に委託する場合も算定の対象になります。委託する場合は、雇用契約や委託契約(共同での委託を含む)を結んだ上で、業務範囲や事故発生時の責任の所在を契約書で明確にしておきます。

3-2. 送迎の場所 ― 自宅以外も合意があれば可

送迎の場所は、原則として利用者の自宅と事業所の間です。ただし、事前に利用者と合意のうえで特定の場所を決めれば、最寄り駅や集合場所など、自宅以外の地点との送迎も対象になります。合意した特定の場所以外への送迎は、算定の対象外として整理されます。

3-3. 対象者① ― 自事業所の利用者

送迎加算の主な対象者は、自事業所のサービスを利用している利用者です。令和6年改定では、それまで対象外だった施設入所者も送迎加算の対象に含まれるようになりました。施設入所者が希望する日中活動の提供を促進する趣旨です。

ただし施設入所者の場合、事業所と同一敷地内または隣接する障害者支援施設を利用する人は引き続き対象外となります。

3-4. 対象者② ― 他事業所の利用者の同乗

令和6年改定で、雇用契約や委託契約(共同での委託を含む)を結んでいる他の障害福祉サービス事業所・介護事業所の利用者を同乗させた場合も、送迎加算の対象になりました。

この場合、費用負担の分け方や事故発生時の責任の所在を、事前に事業所間で文書で取り決めておく必要があります。トラブル時に判断に迷わないよう、契約段階で明確にしておきます。

3-5. 算定対象外になりやすいケース

実務でよく論点になる「算定対象外」のケースを整理しておきます。

  • 体験利用中の利用者の送迎 ― 利用契約前の体験段階での送迎は、加算の対象外として整理されるのが一般的です
  • 入院中・長期欠席中の利用者 ― そもそもサービス提供日として算定していないため、送迎加算も算定できません
  • 利用者の私的な外出への同行・受診同行 ― 通所のための送迎ではないため対象外です
  • 合意した特定の場所以外への送迎 ― 送迎の場所が事前合意の範囲を外れる場合は対象外です

4. A型事業所での送迎の留意点

A型事業所の送迎は、就労移行支援・B型と異なる留意点があります。A型は利用者と雇用契約を結ぶサービスであり、利用者の自立能力を伸ばすことが基本方針です。そのため、送迎は当然に提供するものではなく、公共交通機関の状況や個々の障害特性などを踏まえ、必要な範囲で実施するという整理が求められます。

利用者ごとに送迎の必要性を確認し、その記録を残しておくと、運営指導の場面でも説明しやすくなります。「全員に送迎を提供する」という運用が、A型の趣旨に照らして適切かどうかは、個別の状況に応じた判断が必要と考えられます。

5. 届出と記録の実務

5-1. 事前の届出が必要

送迎加算を算定するには、指定権者への事前の届出が必要です。届出のタイミングによって算定開始月が変わります。

  • 毎月15日以前に届出 ― 翌月から算定開始
  • 毎月16日以降に届出 ― 翌々月から算定開始

要件を満たさなくなった場合は、その日から加算の算定を止めて、実態に合った加算状況を速やかに届け出ます。

5-2. 送迎記録簿の整備

送迎加算の算定根拠となるのは、事後に作成する送迎記録簿(業務日誌の送迎記録欄)です。記録に含めておきたい項目の例は次のとおりです。

  • 運転者の氏名
  • 添乗者がいる場合はその氏名
  • 乗車した利用者の氏名
  • 使用した車種
  • 発時刻・着時刻

実地指導の場面では、送迎記録簿の未整備が指摘されるケースが少なくありません。記録のフォーマットを定型化し、誰がいつどの送迎を行ったかを後から確認できる状態にしておくと、算定根拠の説明がスムーズになります。

5-3. 送迎計画と送迎記録簿は別物

送迎計画(配車計画)は、ドライバー向けの事前メモやルート検討に使う補助的な資料で、必ずしも毎日作成するものではありません。一方、送迎記録簿は事後の事実記録です。両者は役割が異なるため、

  • 送迎計画に載っていない日でも、送迎記録簿に実績があれば算定対象
  • 送迎計画に載っていても、送迎記録簿に記録がなければ算定対象外

という関係になります。算定の根拠は計画ではなく実績の記録である点を、運用の前提に置いておきます。

6. 算定誤りに気付いたときの対応

要件を満たさない加算を誤って算定してしまった場合は、そのままにせず、速やかに「過誤」の手続きを行います。過誤とは、いったん支払いが確定した請求を、事業所側からの申し立てで取り下げる手続きです。

誤った請求を放置すると、運営指導で指摘されるだけにとどまらず、悪質と判断された場合には監査・行政処分・加算金の支払いに発展する可能性があります。気付いた段階で過誤の手続きを取ることが、リスクを抑える基本姿勢になります。

7. 算定前に確認しておきたい3点

  1. 月ごとの送迎実績で要件1・要件2 を安定して満たせるかを見極める ― 月によって振れ幅が大きい事業所は、無理にⅠを目指さない判断もあり得ます
  2. 送迎記録簿の記載項目を定型化し、運転者・添乗者・乗車者・車種・発着時刻が揃う形で整備する ― 実地指導での指摘の最頻ポイントです
  3. 体験利用中・入院中など算定対象外のケースを記録段階で区別できるようにする ― 加算の集計時に対象外を除外できる運用が前提です

8. まとめ

送迎加算は、片道ごとに算定するシンプルな構造の加算ですが、二つの要件の組み合わせ、令和6年改定で拡大した対象者の範囲、A型事業所での配慮、届出のタイミングなど、実務で確認しておきたい論点が複数あります。送迎記録簿を算定の単独ソースとして整え、対象外のケースを記録段階で区別できる運用にしておくと、年度を通じた安定算定につながると考えられます。

行政書士杉山翔事務所では、送迎加算をはじめとする加算の届出書類や、運営指導に向けた記録運用のサポートを承っております。「送迎実績の集計方法を整理したい」「区分Ⅰ・Ⅱ のどちらが現実的か相談したい」「送迎業務の委託契約書を見直したい」といった段階のご相談も承っています。

ご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。


※ 本記事は厚生労働省告示「障害福祉サービス費等の算定に関する基準」および令和6年度報酬改定に係る関連通知における送迎加算の規定を参照して作成しています。要件・単位数の最新の取扱いや、自治体ごとの運用は、厚生労働省および各都道府県・市区町村の発表をご確認ください。