就労継続支援A型・B型・就労移行支援の3サービスには、賃金や工賃の取扱い、生産活動と給付費の関係、個別支援計画の書式、施設外就労や施設外支援の運用といった、就労系ならではの運営指導論点があります。共通論点(虐待防止・業務継続計画・個別支援計画作成サイクル等)に加えて、これらを別立てで押さえておくと、運営指導当日の確認がスムーズになります。
本記事では、就労系3サービスの運営指導で確認される論点を整理します。
1. 就労系全体に共通する論点
施設外就労・施設外支援は、就労系3サービスに共通する重要な論点です。
施設外就労について
施設外就労を行う場合は、発注元(請負契約の相手方となる企業等)との請負契約を整備しておく必要があります。運営指導では「請負契約の存在が確認できない」「契約書の体裁が請負契約として不十分である」という形での指摘が見られます。
また、施設外就労を行う利用者については、その必要性等を個別支援計画に位置付けたうえで、訓練目標に対する達成度評価を行い、記録として残すことが求められます。
施設外支援について
施設外支援を行った場合は、利用者または実習受入事業者等から状況を聞き取り、日報を作成することが必要です。日報の作成が漏れているケースで指摘を受けることがあります。
2. 就労継続支援A型で確認される論点
就労継続支援A型では、雇用契約に基づく労働の場であるという性格から、他の就労系サービスにはない独自の論点があります。
個別支援計画の書式
A型の個別支援計画は、国から示された書式の使用が求められます。事業所独自の様式を使用していると、運営指導で書式の差し替えを求められることがあります。
最低賃金の確認
A型の利用者には最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。最低賃金は毎年改定されているため、改定のたびに自社の賃金水準が最低賃金を下回っていないか確認することが大切です。地域別最低賃金は各都道府県労働局のホームページ等で公表されています。
賃金の原資
賃金は、生産活動の収益のなかから支払うことが原則です。生産活動の収益では賃金を支払えず、給付費から持ち出して賃金に充てている状況が続いている場合、改善計画の作成が求められ、改善の見込みがない場合は指定の取消・停止を含む勧告・命令の対象となることがあります。
運営規程の記載事項
A型の運営規程には、生産活動の内容、賃金、労働時間(作業時間)について記載する必要があります。「実態と運営規程の記載が一致していない」という指摘も典型的な論点です。
3. 就労継続支援B型で確認される論点
B型では、雇用契約ではなく工賃の支給が前提となるため、A型とはまた違った論点が中心となります。
工賃水準と生産活動収益のバランス
工賃の支給水準が生産活動の利益と比較して過大で、給付費から持ち出して工賃に充てている状況が続いている場合、工賃水準の見直しが求められます。「工賃の額」だけでなく「工賃の原資が生産活動から賄えているか」が運営指導の確認ポイントになります。
工賃目標水準の設定
B型事業所では、年度ごとに工賃の目標水準を設定する必要があります。目標水準は事業所が独自に設定しますが、「設定していない」という指摘もよく見られます。
利用者への通知
当該年度の工賃目標水準と、前年度に利用者へ実際に支払われた工賃の平均額を、利用者に通知する必要があります。「目標水準は決めているが利用者への通知ができていない」というケースで指摘を受けやすい部分です。
4. 就労移行支援で確認される論点
就労移行支援は、一般就労への移行を目的とした有期サービスであるという特性から、利用期間の管理と移行実績の把握が重要です。
標準利用期間
就労移行支援の標準利用期間は原則2年です。これを超えて利用する場合は、市町村の支給決定における延長判断が必要となり、利用期間の管理が運営指導で確認されます。
個別支援計画と就労目標
個別支援計画には、一般就労に向けた目標と、目標達成のために実施する訓練内容を対応させて記載する必要があります。「就労目標は記載されているが、日々の訓練内容との対応が見えにくい」という指摘もあります。
一般就労への移行実績の管理
事業所として、一般就労への移行人数、移行先、移行後の継続状況を継続的に把握しておくことが、後述の就労移行支援体制加算の根拠としても重要になります。
5. 加算・報酬まわりで就労系で特に注意したい点
就労移行支援体制加算
就労継続支援A型・B型・就労移行支援に共通する加算で、前年度中に一般就労へ移行し、6か月以上の就労継続を達成した利用者の数に応じて、翌年度の1年間で算定されます。令和8年度改定では、過去3年間の算定実績に基づく制限など、対象事業所の見直しが入っています。B型における加算の構造と令和8年度改定の詳細は、就労移行支援体制加算(B型)のコラムもあわせてご参照ください。
近年は、移行先企業や本人への就労継続状況の確認、証憑書類(在籍確認資料・本人面談記録など)の整備が、運営指導で踏み込んで確認される傾向にあります。「過去に一般就労した方の継続状況が確認できる書類がない」という形で指摘されると、加算の返還につながる可能性もあるため、移行後の継続的なフォローと記録の整備が重要です。
食事提供体制加算
食事提供体制加算は、短期入所と日中活動系サービスを同一日に利用した場合、いずれか1つのサービスでしか算定できず、重複算定はできません。多事業展開している法人で見落とされやすい論点です。
送迎加算・福祉専門職員配置等加算については、共通論点コラムまたは加算別の個別コラムで扱っていますので、そちらをご参照ください。
6. まとめ
就労系3サービスの運営指導では、賃金・工賃が生産活動の収益から賄えているか、施設外就労・施設外支援の記録が整っているか、一般就労への移行実績と就労継続が記録として確認できるかといった、「事業の本質的な部分」が確認されます。書類の体裁だけでなく、運営の中身が指導の対象となる領域です。
行政書士杉山翔事務所では、就労継続支援A型・B型・就労移行支援の運営指導に向けた書類整備、加算算定の確認、個別支援計画の見直し、運営規程の整備、変更届の提出支援などのご相談を承っております。日常的な顧問契約として、運営指導前の点検や加算の継続的な確認にもご対応いたします。
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※ 本記事は障害者総合支援法、指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号)、就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(H19障障発0402001号)、関係する告示・通知、参考として令和7年度静岡県集団指導資料を参照して整理しています。具体的な算定要件・運用は変更されることがあり、自治体ごとに運用が異なる場合もありますので、最新の告示・通知および各自治体の公表情報をご確認ください。