就労移行支援体制加算は、就労継続支援B型の利用者が一般企業等に就職し、6か月の雇用継続を達成した場合に、その実績を翌年度の報酬で評価する加算です。令和8年度の臨時報酬改定では、この加算について「年間で算定可能な就労定着者数の上限」と「過去3年間の算定実績による制限」という、2つの大きな見直しが入りました。
本記事では、加算の基本構造と算定タイミングを整理したうえで、令和8年度改定の見直し内容と、運営指導で問われやすい確認ポイントを整理します。
1. 加算の基本構造
就労移行支援体制加算は、就労継続支援B型の利用者が、雇用契約を結ぶ一般就労に移行し、6か月の雇用継続を達成した場合(就労定着)に算定できる加算です。雇用契約を結ぶ就労であれば労働時間等の条件は問われませんが、就労継続支援A型での利用者としての雇用契約や、施設外支援のトライアル雇用はカウント対象になりません。
なお、同名・類似の加算は就労継続支援A型・就労移行支援にも設けられていますが、算定構造(移行率による区分など)が異なります。本記事ではB型に絞って整理します。
算定額は、利用定員と平均工賃月額に応じた所定単位数に、前年度の就労定着者数を乗じて算出されます。具体的な単位数は告示で定められており、令和8年度改定では基本報酬区分の見直しと連動して加算の区分にも変更が入っていますので、最新の告示で確認してください。
2. 算定タイミングと届出
算定の対象となるのは、前年度中に6か月の雇用継続に達した就労定着者がいる事業所です。たとえば令和X年度中に6か月雇用継続に達した利用者がいる場合、その翌年度(令和X+1年度)の1年間にわたって加算を算定する形になります。
就労移行支援体制加算は前年度実績に基づく年度単位の加算であり、年度途中に新たな算定対象者を加える、という変更はできません。前年度末に確定した定着者数で、翌年度1年間の算定が決まる仕組みです。
届出については、4月分から算定するためには、指定権者の定める期限(多くは4月前半に設定されています)までに体制届を提出する必要があります。前年度実績を用いる加算は、指定権者ごとに4月の届出期限の運用が異なることがありますので、毎年度、自治体の通知を確認しておくと安心です。
3. 令和8年度改定①:年間算定可能人数の上限新設
令和8年度改定の1つめの見直しは、年間に算定できる就労定着者数の上限です。
これまでは、就労定着者の人数分だけ加算を算定でき、特段の制限はありませんでした。令和8年4月から、年間に算定できる就労定着者数は「その事業所の定員数まで」が上限となります。たとえば定員20人の事業所であれば、年間最大20人分までが算定対象となる、という整理です。
この見直しは、同一の利用者が事業所と一般企業との間で離転職を繰り返し、そのたびに加算を取得する、という運用を防ぐ趣旨で設けられたものです。本来の制度趣旨(定着に向けた支援体制の構築を評価する)に立ち戻った調整、と捉えると見通しやすくなります。
4. 令和8年度改定②:過去3年間の算定実績による制限
2つめの見直しは、同一利用者の過去の算定実績に関する制限の拡張です。
従来から、「同一事業所において過去に就労移行支援体制加算の算定対象となった利用者は、再度の算定対象としない」というルールが設けられていました。令和8年度改定では、これが「事業所の自他を問わず、過去3年間に算定対象となった利用者は、原則として算定対象外」と拡張されます。
ここでいう「他の事業所」には、自法人の別事業所も他法人の事業所も、すべて含まれます。同じ利用者が事業所を移ったうえで、複数の事業所で何度も加算の対象になる、という運用を抑制するための制限です。
過去3年間の起算については、令和8年3月31日付の厚生労働省Q&A(Vol.1)問32で次のように整理されています。「体制届を受理した年度の前年度末日から起算して3年間」、すなわち令和8年4月に体制届を受理した場合は、令和5年度から令和7年度までの算定実績を確認することになります。
なお、例外として、ハラスメント等のやむを得ない事情により退職した場合や、市町村長が適当と認める事情がある場合には、過去3年間以内に算定対象となっていた利用者であっても、算定対象として認められることがあります。
5. 算定のための準備物と運営指導での確認ポイント
加算の算定にあたっては、次のような書類を整備しておく必要があります。
- 就職した利用者の名簿(氏名、就職日、就職先企業名等)
- 6か月雇用継続を証明するもの(雇用継続証明書、給与明細のコピー等)
- 過去3年間の算定実績がわかる資料
- 体制届などの届出書類
特に過去3年間の算定実績の確認は、令和8年度改定で範囲が「自他を問わず」に広がったことで、確認の手間が大きくなる部分です。利用者が他の事業所から転所してきた場合は、前の事業所や市町村の障害福祉担当課に対して、過去の算定実績の有無を照会することが必要になります。確認漏れのまま算定してしまうと、加算返還につながる可能性があります。
要件を満たしていない月について誤って算定してしまった場合は、そのままにせず速やかに「過誤」の手続き(請求の取下げ・再請求)を取ることが大切です。誤った請求を放置すると、運営指導での指摘にとどまらず、加算金の支払いなど監査・行政処分に発展する可能性もあります。
6. まとめ
就労移行支援体制加算は、B型から一般就労への移行と定着の実績を、翌年度の報酬で評価する加算です。令和8年度改定では「年間算定可能人数の上限」と「過去3年間の算定実績による制限」という2つの見直しが入り、これまでより厳格な運用が求められる形になりました。算定の前提として、利用者ごとの就職日・定着日・過去の算定履歴を継続的に管理しておくことが、加算返還リスクを抑える鍵になります。
行政書士杉山翔事務所では、就労移行支援体制加算をはじめとする各種加算の算定確認、利用者の就労実績管理、運営指導前の点検などのご相談を承っております。日常的な顧問契約として、年度ごとの加算要件の継続的な確認にもご対応いたします。
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※ 本記事は障害者総合支援法、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A Vol.1(令和8年3月31日)、関係する厚生労働省告示・通知を参照して整理しています。具体的な単位数・算定要件・届出様式は改定や自治体ごとの運用により異なる場合がありますので、最新の告示・通知および各自治体の公表情報をご確認ください。