令和8年4月28日に開催された障害福祉サービス等報酬改定検討チームの参考資料1で、令和7年12月時点の各サービスの加算等取得率が公表されました。3年に1度しか公表されない貴重なデータで、就労継続支援B型についてもサービスのスケール感、利用者層、工賃水準、各加算の算定状況が一覧で確認できます。
本記事では、この資料をもとに就労継続支援B型の現状を整理します。個別の加算の算定要件や実務上の留意点については、別記事で順次扱う予定です。
1. 就労継続支援B型のスケール感
就労継続支援B型の令和6年度の費用額は約6,294億円で、障害福祉サービス等全体の総費用額の約15.1%を占めています。サービス類型として最大規模の領域です。
国保連の令和7年12月実績では、事業所数は19,970か所、利用者数は419,151人にのぼります。過去十数年、総費用額・利用者数・事業所数のいずれも毎年増加を続けており、増加のペースに大きな鈍化は見られません。
報酬制度・運営基準の見直しが障害福祉全体に与える影響を考えるうえで、B型は無視できないボリュームを持ったサービスである、という出発点をまず押さえておくと、各種改定の議論も読みやすくなります。
2. 利用者層の変化 — 精神中心・高齢化のトレンド
利用者の障害種別の構成は、令和7年12月時点で次のようになっています。
| 障害種別 | 構成比 |
|---|---|
| 精神障害者 | 44.9% |
| 知的障害者 | 43.0% |
| 身体障害者 | 11.7% |
| 難病等対象者 | 0.4% |
3年前(令和5年12月)は知的46.7%・精神41.1%でしたが、精神が増加・知的が減少のトレンドが続いた結果、令和7年12月の時点で逆転寸前まで構成比が動いています。
年齢階層別に見ると、40歳以上の利用者が約6割を占め、特に50歳以上60歳未満(22.5%)と65歳以上(10.9%)が増加傾向にあります。「精神障害者中心・高齢化」が現在のB型利用者像の中心的な傾向と考えられます。
3. 工賃水準の底上げ
平均工賃月額は、令和5年度の22,649円から、令和6年度は24,141円に上昇しています。令和5年度から算定方式が見直されているため、それ以前との単純比較には注意が必要ですが、水準として底上げが進んでいる傾向は読み取れます。
工賃月額別の事業所構成比を、令和6年4月から令和7年12月の動きで見ると、次のような変化が起きています。
| 平均工賃月額 | R7.12 構成比 | 事業所数の増減率(R6.4→R7.12) |
|---|---|---|
| 4.5万円以上 | 6.9% | +57.5% |
| 3.5〜4.5万円 | 7.9% | +33.4% |
| 3〜3.5万円 | 6.8% | +18.4% |
| 2.5〜3万円 | 10.7% | +24.7% |
| 2〜2.5万円 | 16.6% | +20.7% |
| 1.5〜2万円 | 20.3% | +10.5% |
| 1〜1.5万円 | 16.2% | ▲3.4% |
| 1万円未満 | 14.6% | +1.4% |
上位の工賃区分(特に4.5万円以上)が大幅に増加し、最下位帯のひとつである1〜1.5万円帯のみ事業所数が減少しています。二極化というよりは「全体的な底上げ」と読み取れる構造です。
令和8年6月の基本報酬改定でも、工賃月額の高低による報酬差はさらに拡大する見込みです。工賃改善の取り組みは、報酬制度のインセンティブとしてもますます強く働く構造になっています。基本報酬と工賃の関係については、B型平均工賃と基本報酬のコラムもあわせてご参照ください。
4. 参加型B型の縮小と6:1配置への集中
令和6年改定で導入された、利用者の就労や生産活動等への参加等をもって一律に評価する報酬体系(いわゆる参加型B型)の動向も注目されます。
参加型B型を選択している事業所は、令和7年12月時点で194か所にとどまり、B型全体の1%未満です。令和6年4月の225か所から1年半ほどで縮小しています。
| 常勤加算方法の区分 | R6.4 | R7.12 | 増減率 | 構成比の変化 |
|---|---|---|---|---|
| 6:1以上 | 166 | 152 | ▲8.4% | 73.8% → 78.4% |
| 7.5:1以上 | 50 | 36 | ▲28.0% | 22.2% → 18.6% |
| それ以外 | 9 | 6 | ▲33.3% | 4.0% → 3.1% |
| 計 | 225 | 194 | ▲13.8% | — |
参加型B型全体は縮小していますが、参加型のなかでは6:1配置の構成比が73.8%から78.4%へと上昇しています。参加型のなかで基本報酬が相対的に高い6:1配置に事業所が集約され、7.5:1配置や「それ以外」の区分は事業所数・構成比ともに減少している構造です。
参加型B型は、就労や生産活動への参加そのものを評価する報酬体系として制度化されましたが、現状ではB型事業所の大多数が工賃型(基本報酬Ⅰ〜Ⅵ)を選択し続けており、参加型を選択した事業所も基本報酬の高い6:1配置に集中している、というのが実態です。
5. 加算取得率の3つの層
参考資料1には、就労継続支援B型のすべての加算について、令和7年12月時点の取得率が掲載されています。全体像を眺めると、加算は大きく3つの層に分かれます。
高取得率群(多くの事業所で算定されている加算)
| 加算 | 取得率 |
|---|---|
| 欠席時対応加算 | 75% |
| 食事提供体制加算 | 56% |
| 福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅰ) | 48% |
| 目標工賃達成指導員配置加算(イ・定員20人以下) | 47% |
| 送迎加算(Ⅰ) | 39% |
| 送迎加算(Ⅱ) | 35% |
| 初期加算 | 33% |
| 福祉専門職員配置等加算(Ⅲ) | 33% |
| 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ) | 27% |
| 福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅱ) | 20% |
| 福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) | 14% |
| 目標工賃達成加算 | 13% |
この層は、要件が満たしやすく、評価の単位数も実態に即している加算が中心です。
中取得率群(条件を満たす事業所が算定している加算)
| 加算 | 取得率 |
|---|---|
| 福祉専門職員配置等加算(Ⅱ) | 9% |
| 利用者負担上限額管理加算 | 5% |
| 重度者支援体制加算(Ⅱ) | 5% |
| 福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) | 4% |
| 重度者支援体制加算(Ⅰ) | 2% |
| 訪問支援特別加算(1時間未満) | 2% |
| 医療連携体制加算(Ⅳ・利用者3〜8人) | 2% |
利用者の特性や事業所の体制が条件を満たした場合に算定される加算群です。
ほぼゼロ%群(制度はあるが現場ではほぼ算定されていない加算)
- 視覚・聴覚言語障害者支援体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)
- 高次脳機能障害者支援体制加算
- 就労移行支援体制加算(ほぼ全区分)
- 障害福祉サービスの体験利用支援加算
- 在宅時生活支援サービス加算
- ピアサポート実施加算
- 緊急時受入加算
- 集中的支援加算
- 就労移行連携加算
この層には、制度として設けられているものの、現場ではほとんど算定されていない加算が並びます。次節で構造を整理します。
個別の加算については別記事で順次扱う予定です。現時点では、欠席時対応加算、食事提供体制加算、目標工賃達成指導員配置加算、福祉専門職員配置等加算、目標工賃達成加算、就労移行支援体制加算(B型)のコラムが公開されています。
6. ほぼゼロ%加算群を3つに分けて読む
「制度はあるが現場ではほぼ算定されていない加算」が、なぜ算定されていないのかは、加算ごとに事情が異なります。3つに分類すると整理しやすくなります。
① 対象事業所・対象利用者が限定される加算
ピアサポート実施加算は、参加型B型(基本報酬Ⅳ〜Ⅵに相当する区分)でのみ算定可能な加算です。前節で見たとおり、参加型B型自体が194事業所まで縮小しており、今後も縮小傾向が続くと想定されます。制度設計上、算定可能な事業所の母集団そのものが小さいため、算定実績も限定的になります。
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算、高次脳機能障害者支援体制加算は、対象となる利用者層が一定数いる事業所のみ算定可能です。重度者支援体制加算も、障害基礎年金1級受給者を一定割合以上受け入れている事業所のみ算定対象となるため、生活介護との棲み分けが進んでいる現状を踏まえると、B型での算定事業所は限定的になります。
② 地域生活支援拠点等との連携が前提の加算
緊急時受入加算、集中的支援加算、在宅時生活支援サービス加算は、地域生活支援拠点等の体制整備や連携を前提とする加算です。地域生活支援拠点の整備状況は自治体ごとに差があり、整備済みでも実際の運用に至っていない地域も多いため、加算として現場で動きにくい構造があります。
③ 実績ハードルが高い加算
就労移行支援体制加算は、B型からの一般就労6か月以上継続者をベースに算定する加算です。前年度実績がベースになるうえ、令和8年度改定では「過去3年間に算定対象者がいない場合は算定不可」というルールが厳格化される見通しです。算定事業所はさらに限定されていくと想定されます。詳細は就労移行支援体制加算(B型)のコラムをご参照ください。
7. まとめ — データから読み取れる視点
就労継続支援B型は、障害福祉サービス全体の約15.1%を占める最大規模のサービスとして、利用者層の変化(精神中心化・高齢化)と工賃水準の底上げが並行して進んでいます。一方、参加型B型のような新しい報酬体系は現場で十分に浸透しておらず、多くの事業所が工賃型を選び続けています。
加算取得率は3つの層に分かれており、自事業所が算定していない加算でも、要件を満たせる可能性があるものは見直す価値があります。逆に、ほぼゼロ%群の加算は「取りこぼし」ではなく、制度設計と現場実態のミスマッチに起因していることが多く、無理に取りに行く加算ではない、という整理になります。
令和8年6月の基本報酬改定では、工賃区分による報酬差の拡大、処遇改善加算の区分再編など、複数の見直しが入ります。データを継続的に押さえつつ、個別加算の検討は別記事で順次扱っていきます。
行政書士杉山翔事務所では、就労継続支援B型をはじめとする障害福祉サービス事業所の指定申請、運営指導対策、各種加算届出、処遇改善加算の計画書・実績報告書作成支援などのご相談を承っております。「うちはどの加算を算定すべきか整理したい」段階のご相談も歓迎いたします。
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※ 本記事は厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(令和8年4月28日)」参考資料1、および同資料に掲載されている国保連データ(令和7年12月実績)を参照して整理しています。各加算の最新の算定要件・単位数は、告示・通知をご確認ください。