目標工賃達成加算は、就労継続支援B型の事業所が工賃向上計画を策定し、実績として一定水準以上の工賃を達成した場合に算定できる加算です。1日あたり10単位と単位数自体は控えめですが、「実績に基づいて算定できる」という点で、目標工賃達成指導員配置加算(体制ベースの加算)とは性格が異なります。
令和7年12月の取得率は13%で、配置加算(イ・定員20人以下で47%)と比べると算定事業所はかなり限定的です。本記事では、算定要件、配置加算との関係、そして取得率が13%にとどまる構造的な背景を整理します。
1. 加算の概要
目標工賃達成加算は、工賃向上計画に基づき、利用者の工賃水準を一定基準以上に引き上げている事業所を評価する加算です。
- 単位数:10単位/日
- 取得率:13%(B型、令和7年12月)
10単位/日は他の加算と比べて大きな単位数ではありませんが、利用者数×開所日数で算定されるため、年間ベースでは無視できない収入につながります。
ただし、この加算は事業所側の体制を整えれば取得できるものではなく、実績としての工賃水準が一定基準を超えていることが算定の前提となります。算定可否は事業所の取り組みだけで決まるわけではなく、利用者層や生産活動の内容、市況など、複数の要因が絡む結果として決まる加算です。
2. 算定要件 — 工賃向上計画とベンチマーク
目標工賃達成加算を算定するためには、大きく次の3つの条件を満たす必要があります。
ひとつめは、工賃向上計画を策定し、都道府県知事に届け出ていることです。工賃向上計画は、目標工賃の水準や、それに向けた具体的な取り組みを記載した計画書で、年度ごとに策定・実績報告を行うことが求められます。
ふたつめは、前年度の平均工賃月額が、都道府県内の事業所の前々年度の平均工賃月額の平均を上回っていることです。ベンチマークは「自事業所の過去実績」ではなく「都道府県の事業所全体の平均」である点が、この加算の特徴です。
みっつめは、目標工賃達成指導員を1名以上配置していることです。これは目標工賃達成指導員配置加算と同じ要件で、両加算は配置の前提を共有しています。詳細は目標工賃達成指導員配置加算のコラムもあわせてご参照ください。
ベンチマーク(都道府県の前々年度平均)は毎年変動するため、「一度算定できれば翌年以降も算定できる」という性質のものではありません。前年度の自事業所の実績と、前々年度の都道府県平均を、毎年突き合わせて確認することになります。
3. なぜ取得率は13%にとどまるのか
目標工賃達成加算の取得率が13%にとどまる背景には、ベンチマークの構造があります。
ベンチマークとなる「都道府県の前々年度の平均工賃月額の平均」は、その都道府県のB型事業所全体の平均値です。全国的に工賃水準が上昇している時期は、都道府県の平均値も上昇していくため、ベンチマーク自体が毎年上がる傾向にあります。
B型現状コラムで整理したとおり、令和6年4月から令和7年12月にかけて、平均工賃月額が4万5千円以上の事業所は+57.5%、3万5千円〜4万5千円未満の事業所は+33.4%と、上位区分の事業所が急増しています。全体として工賃水準の底上げが進んでいる時期は、ベンチマークもそれに連動して上がるため、加算を継続的に算定し続けるためには、ベンチマークを上回るペースで工賃を伸ばし続ける必要があります。
さらに、工賃水準は事業所の取り組みだけで決まるわけではなく、利用者の障害特性、生産活動の業種、地域の発注先の状況など、外部要因にも左右されます。事業所として工賃向上計画に沿って改善を続けても、ベンチマークの上昇に追いつけない年度は算定できない、という構造になっています。
4. 目標工賃達成指導員配置加算とセットで見る
目標工賃達成加算(13%)と目標工賃達成指導員配置加算(イ・定員20人以下で47%)は、要件のひとつ(指導員配置)を共有しているにもかかわらず、取得率に大きな差があります。
これは、配置加算が「指導員を配置し、6:1配置を満たしていれば算定可能」という体制ベースの加算であるのに対し、目標工賃達成加算が「実績として都道府県平均を上回ること」を要件とする成果ベースの加算であることが理由です。指導員を配置している事業所のうち、実績要件まで満たせている事業所が約3割弱、という関係になります。
事業所としては、まず配置加算で「工賃向上に取り組む体制」を整え、その取り組みの成果が一定水準に達した年度に、目標工賃達成加算が上乗せされる、という二段構えの構造で見ておくと、加算の位置づけが理解しやすくなります。配置加算を算定している事業所が、目標工賃達成加算も狙えるかどうかは、毎年の都道府県平均との対比で年度ごとに判定していくことになります。
5. まとめ
目標工賃達成加算は、工賃向上計画に基づく成果評価の加算で、単位数は10単位/日と控えめですが、年間ベースでは事業所収入に一定の貢献をします。ただし、算定可否は「都道府県の前々年度平均」というベンチマークに左右され、事業所側の取り組みだけで完全にコントロールできる加算ではありません。
実務的には、目標工賃達成指導員配置加算とセットで体制を整え、工賃向上計画の策定・実績報告のサイクルを安定的に回したうえで、年度ごとにベンチマークとの対比で算定可否を確認していく、というのが現実的な向き合い方です。算定できた年度・できなかった年度のいずれであっても、工賃向上の取り組み自体は事業所運営の柱として継続することが、長期的には利用者・事業所の双方に資すると考えられます。
行政書士杉山翔事務所では、就労継続支援B型の指定申請、運営指導対策、各種加算届出、工賃向上計画の整備に関するご相談を承っております。「工賃向上計画の作り方から相談したい」といった切り口でも構いません。
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※ 本記事は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づくサービス提供に係る各種告示および厚生労働省関連通知を参照して整理しています。各加算の最新の算定要件・単位数・ベンチマーク値は、最新の告示・通知・各都道府県の公表値をご確認ください。