就労継続支援B型の平均工賃月額を上げるためには、生産活動の改善と、それを継続的に推し進めるための体制が欠かせません。この体制づくりを支える加算のひとつが「目標工賃達成指導員配置加算」です。
本記事では、加算の趣旨、目標工賃達成指導員の役割、工賃向上計画との関係、算定要件、運営指導での確認ポイントを整理します。
1. 加算の趣旨と目標工賃達成指導員の役割
目標工賃達成指導員配置加算は、就労継続支援B型のみが対象となる加算です(A型・就労移行支援には設けられていません)。通常の人員配置基準で求められる職員とは別に、工賃の向上に取り組む職員(目標工賃達成指導員)を一定数以上配置している場合に算定できる仕組みになっています。
目標工賃達成指導員に法令上の資格や実務経験の要件はありません。事業所として「工賃を上げるための取り組みを誰に担ってもらうか」を決め、その方を専従に近い形で位置づけるイメージです。具体的に想定される業務には、次のようなものがあります。
- 工賃向上計画の策定とその進捗管理
- 生産活動の企画・改善、新規受注の開拓
- 受注先や取引先との交渉
- ICT機器の導入や作業工程の見直しによる生産性向上の支援
- 地域連携(農福連携をはじめとする、新たな生産活動領域の開拓)
「指導員」という名称ですが、利用者への直接的な支援だけでなく、生産活動全体のマネジメントを担うポジションと捉えると、加算の趣旨がつかみやすくなります。
2. 工賃向上計画との関係
目標工賃達成指導員配置加算は、工賃向上計画とセットで動く加算です。
工賃向上計画は、各都道府県が定める計画に沿って、B型事業所が3か年単位で策定するもので、現在は令和6年度から令和8年度までの3年間が対象期間となっています。期間中に新規に指定を受けた事業所は、指定時から令和8年度までの計画を策定する形になります。
工賃向上計画はB型事業所が策定する前提のものですが、目標工賃達成指導員配置加算を算定するためには、この計画の策定が要件として明確に組み込まれています。加算を取りに行くかどうかにかかわらず、まずは計画づくりに取り組んでおくことが、加算算定の入口になります。
3. 算定要件
目標工賃達成指導員配置加算を算定するためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
- 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)を算定していること B型サービス費(Ⅰ)(Ⅳ)はいずれも、職業指導員・生活支援員の人員配置が「6:1」となっている区分です。一定水準以上の人員配置体制が前提となっている点に注意が必要です。
- 工賃向上計画を作成していること
- 目標工賃達成指導員を、通常の人員配置とは別に常勤換算方法で1.0人以上配置していること 常勤1名を充てる以外に、複数の非常勤職員の勤務時間を合算して常勤換算で1.0人以上とする形でも要件を満たせます。
- 目標工賃達成指導員・生活支援員・職業指導員の3職種の合計人数(常勤換算)が、前年度の平均利用者数を5で割った数以上であること たとえば前年度の平均利用者数が20人の事業所であれば、3職種合計で常勤換算4.0以上の配置が必要となります。目標工賃達成指導員を1人足せばよいというだけではなく、事業所全体としての支援体制が一定以上整っていることが前提とされています。
ここで注意したいのは、要件④を満たすために基本配置を薄くすることはできない、という点です。要件①が「B型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)の算定」であり、これらはいずれも職業指導員・生活支援員が「6:1」で配置されている区分を指します。基本配置を切り詰めれば、サービス費の区分そのものが変わり、加算の前提となる要件①が崩れる構造になっています。
結果として、6:1の基本配置を満たしたうえで、その配置とは別枠で目標工賃達成指導員を1.0以上配置すれば、3職種合計はほぼ自然に5:1相当(前年度平均利用者数÷5以上)の水準に達します。要件④は、「基本配置を切り詰めて加算だけ取りに行く」運用を防ぐための下支えの基準、と捉えると全体構造が見通しやすくなります。
4. 単位数と届出
単位数は、事業所の利用定員に応じて次のように変動します。
| 利用定員 | 単位数(1日あたり) |
|---|---|
| 20人以下 | 45単位 |
| 21人以上40人以下 | 40単位 |
| 41人以上60人以下 | 38単位 |
| 61人以上80人以下 | 37単位 |
| 81人以上 | 36単位 |
この単位数に、事業所所在地の地域区分ごとに定められた1単位の単価と、当月の延べ利用者数を掛け合わせて、月ごとの算定額が決まる仕組みです。具体的な単価や算定式の細部は、改定のたびに見直される可能性がありますので、最新の告示・通知でご確認ください。
算定にあたっては、指定権者への事前の届出が必要です。毎月15日以前に届け出ると翌月分から、16日以降の届け出は翌々月分から算定が可能となります。また、職員の異動などで要件を満たさなくなった場合は、速やかに届出を更新する必要があります。
5. 運営指導での確認ポイントと誤算定への対応
運営指導の現場では、目標工賃達成指導員配置加算について、特に次の点が確認されます。
- 目標工賃達成指導員の業務内容が、職業指導員・生活支援員と区別できているか
- 工賃向上計画と整合した取り組みが行われているか
- 勤務実績の記録(3職種別の配置状況と勤務実態が分かる勤務体制一覧表)が整っているか
- 前年度平均利用者数と3職種合計の常勤換算の関係が、要件を満たすことを示す根拠資料が残っているか
特に「配置はしているが、業務内容が他の指導員と区別できない」という状態は、加算の趣旨から外れていると判断されやすい部分です。目標工賃達成指導員に何を担当してもらうのか、業務分担を明文化し、活動の記録を残しておくことが大切です。
要件を満たさない月について誤って加算を算定してしまった場合は、そのままにせず、速やかに「過誤」の手続き(請求の取下げ・再請求)を取ることが必要です。誤った請求を放置すると、運営指導での指摘にとどまらず、加算金の支払いなどに発展する可能性もあります。
6. まとめ
目標工賃達成指導員配置加算は、B型事業所の工賃向上を支える取り組みを評価する加算であり、配置による加算収入だけでなく、平均工賃月額の上昇による基本報酬区分の引き上げという、二つの収入インパクトを期待できる仕組みです。基本報酬区分と平均工賃月額の関係については、B型平均工賃月額と基本報酬区分のコラムもあわせてご参照ください。一方で、生産活動の収益から賃金・工賃を賄うという原則は変わらないため、加算による直接収入だけを目的とした配置では、加算の趣旨から外れる可能性があります。
行政書士杉山翔事務所では、目標工賃達成指導員配置加算をはじめとする各種加算の算定確認、工賃向上計画の策定支援、運営指導前の点検などのご相談を承っております。日常的な顧問契約として、年度ごとの加算要件の継続的な確認にもご対応いたします。
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※ 本記事は障害者総合支援法、関係する厚生労働省告示・通知(指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準、留意事項通知等)、各都道府県の工賃向上計画関連通知を参照して整理しています。具体的な単位数・算定要件・届出様式は改定や自治体ごとの運用により異なる場合がありますので、最新の告示・通知および各自治体の公表情報をご確認ください。