食事提供体制加算は、低所得者等に該当する利用者へ食事を提供する事業所を評価する加算で、就労継続支援B型では1日あたり30単位が算定できます。令和7年12月の取得率は56%で、B型事業所の半数以上が算定している、現場で広く使われている加算です。
ただし、この加算には1点重要な前提があります。それは「経過措置加算」だという点です。本記事では、加算の基本構造、対象者の範囲、経過措置の経緯、そして運営指導で確認される実務上のポイントを整理します。
1. 加算の概要 — 経過措置加算という位置づけ
食事提供体制加算は、厚生労働大臣が定める対象者(低所得者等)に対して、事業所内またはこれに準ずる方法で食事を提供する体制が整っている場合に算定できる加算です。B型の単位数は30単位/日です。
この加算は、平成18年の障害者自立支援法施行時に「経過的な措置」として設定されたもので、制度本則の加算ではありません。その後、3年ごとの報酬改定のたびに延長が繰り返され、現時点(令和6年改定)では令和9年3月末まで期間が延長されています。延長と廃止のいずれも継続議論の対象になっており、令和9年度以降の扱いは次の報酬改定時に改めて方向性が示される見込みです。
経過措置加算であるという性質上、長期的な事業計画のなかで「この加算は将来的になくなる可能性がある」という前提で見ておく方が安全です。
2. 対象者の確認 — 低所得者等の範囲
食事提供体制加算は、すべての利用者が対象になるわけではなく、「低所得者等」に該当する方への食事提供のみが算定対象となります。
具体的には、利用者の世帯の所得区分に応じた次の方が該当します。
- 生活保護受給世帯
- 低所得(市町村民税非課税世帯)
- 一般1(市町村民税課税世帯のうち、所得割16万円未満の世帯。20歳以上の利用者の場合)
利用者負担上限月額の区分でいうと、0円または9,300円(B型は基本的に20歳以上のため一般1に該当する範囲まで)の方が対象になります。一般2(所得割16万円以上)の方は対象外です。
実務的には、受給者証に記載されている所得区分・利用者負担上限月額を確認し、食事提供記録と所得区分を突き合わせて算定対象を管理することになります。世帯所得は年度単位で見直されるため、年度をまたぐ時期や、世帯状況の変動があった時期は特に確認が必要です。
3. 食事提供体制 — 自前調理または委託
加算の名称にあるとおり、評価の対象は「食事を提供する体制」が整っていることです。具体的には、次のいずれかの体制を確保している必要があります。
- 事業所内の厨房設備で調理し、利用者に食事を提供する
- 事業所外の調理施設に調理を委託し、当該施設で調理された食事を利用者に提供する
外部の弁当業者から弁当を購入して配付するだけの形態は、ここでいう「食事提供体制」には該当しないと整理されています。事業所として食事の内容・衛生・栄養に責任を負う形での提供であることが前提です。
衛生管理についても、食品衛生法の改正により令和3年6月からHACCPの考え方を取り入れた衛生管理が原則すべての食品等事業者に義務化されています。事業所内調理・調理委託のいずれの場合も、衛生管理計画の策定や記録の整備が運営上の前提となります。
加算を算定するためには、事業所として「食事提供体制を有している」旨を都道府県等への体制届で届け出ておくことが必要です。
なお、同一日に短期入所と日中活動系サービス(B型を含む)を併用した利用者については、食事提供体制加算はいずれか1つのサービスでしか算定できず、重複して算定することはできません。複数のサービスを併設している法人では、サービス間での重複算定が起きていないかの確認が必要です。
4. 経過措置の経緯と直近の議論
食事提供体制加算は、平成18年の自立支援法施行時から経過措置として設定されて以降、報酬改定のたびに延長が繰り返されてきました。平成21年・平成24年・平成27年・平成30年・令和3年・令和6年と、6回連続で延長されています。
令和6年改定では、本則化(恒常的な加算への移行)も議論されましたが、結論としては「引き続き経過措置として令和9年3月末まで延長」となり、その間に、加算の本来の趣旨(低所得者の食事の確保)と、近年の食事提供のあり方(栄養管理・衛生管理の高度化、食事提供そのものを行わない事業所の存在)を踏まえた検討を続ける、という整理になっています。
加算自体は20年近く存続しているため、現場では「定常的な加算」のように扱われている面がありますが、制度上はあくまで経過措置です。令和9年4月以降の扱いは、令和9年度の報酬改定で改めて方向性が示されるため、次回改定の議論を継続的にフォローしておくことが必要です。
5. 運営指導で確認されるポイント
食事提供体制加算は取得率が高い加算であるとともに、運営指導でも算定の妥当性が確認されやすい加算です。確認のポイントは大きく3つです。
ひとつめは、対象者の所得区分の管理です。受給者証の所得区分を確認したうえで、対象となる利用者のみを算定対象として整理できているか、年度更新時に再確認できているか、が確認されます。一般2に該当する方を誤って算定対象に含めていた、というのは典型的な指摘パターンです。
ふたつめは、食事提供の事実の記録です。日々の食事提供記録(メニュー、提供日、提供人数等)が整備されているか、提供日と算定日が一致しているか、が確認されます。日中支援に来所しなかった日に算定していた、というケースも指摘対象になります。
みっつめは、食事提供体制そのものです。厨房設備や調理委託契約の実態、衛生管理計画と記録、栄養面の配慮(必要に応じた栄養士・管理栄養士との連携)など、加算の前提となる体制が整っているかが確認されます。
これらは特別な書類整備が必要というよりは、日々の運営記録を継続的に整え、所得区分の管理を年度サイクルに組み込んでおくことで対応できる範囲です。
6. まとめ
食事提供体制加算は、低所得者等への食事提供を評価する加算で、B型では30単位/日と単位数自体は大きくないものの、毎日積み重なるため事業所の収支に与える影響は無視できません。一方、経過措置加算という性質上、令和9年4月以降の扱いは未確定で、長期的には廃止・縮小の可能性も視野に入れておく必要があります。
算定実務としては、対象者(低所得者等)の管理、食事提供の記録、食事提供体制(自前調理または調理委託)の3点を継続的に整えておくことで、運営指導でも安心して受け答えできる状態になります。
行政書士杉山翔事務所では、就労継続支援B型の指定申請、運営指導対策、各種加算届出に関するご相談を承っております。「うちは食事提供体制加算を算定しているが、書類整備が追いついているか不安」といった切り口でも構いません。
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※ 本記事は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づくサービス提供に係る各種告示(令和6年厚生労働省告示)および厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」関連資料を参照して整理しています。各加算の最新の算定要件・単位数・経過措置の期間は、最新の告示・通知をご確認ください。