送迎加算は、成人向けの障害福祉サービスと児童向けのサービスでそもそも考え方が異なります。本記事は、児童向けのうち児童発達支援・放課後等デイサービス・児童発達支援センターを念頭に、送迎加算の基本構造と実務で押さえておきたい論点を整理しました。
令和6年度の報酬改定では、医療的ケア児・重症心身障害児の送迎について、こどもの医療濃度(医療的ケアスコア)を踏まえた評価が新設されました。中重度医療的ケア児の上乗せ加算が設定されたほか、医療的ケア児の送迎加算が、医療的ケア区分による基本報酬を算定していない事業所でも算定可能になっています。
1. 児童向け送迎加算の基本構造
1-1. 算定の単位
児童向けの送迎加算は、車両により利用児童の居宅や学校等と事業所との間の送迎を行った場合に、片道ごとに算定する仕組みです。徒歩や公共交通機関の付き添いは加算の対象外として整理されます。
同一敷地内、または隣接する敷地内で行う送迎については、本来の単位数の70%で算定する取扱いです。
1-2. 事業所の類型 ― 一般型と重心型
児童向けの送迎加算は、事業所の類型によって単位数の体系が分かれます。本記事では、便宜上「一般型事業所」「重心型事業所」と呼び分けて整理します。
- 一般型事業所 ― 児童発達支援センター、主として重症心身障害児を支援する事業所以外(一般的な児発・放デイなど)
- 重心型事業所 ― 児童発達支援センター、主として重症心身障害児を支援する事業所(重症心身障害児支援を主たる事業として行う事業所)
一般型は「重症心身障害児に行う場合以外の基本報酬」を算定している事業所、重心型は「重症心身障害児に行う場合の基本報酬」を算定している事業所、という対応関係です。算定する加算の選択肢が類型ごとに異なるため、自所がどちらに当たるかをまず確認します。
2. 一般型 ― 一般的な事業所での送迎加算
2-1. 基本 ― 障害児:片道54単位
一般型事業所が利用児童を送迎した場合、基本となる単位数は片道54単位です。重症心身障害児・医療的ケア児に該当しない児童の送迎は、こちらの単位で算定します。
2-2. 一定条件1 ― 重症心身障害児・医療的ケア児:+片道40単位
重症心身障害児または医療的ケア児を送迎する場合、基本の54単位に加えて片道40単位が上乗せされます。令和6年改定で、医療的ケア児の送迎加算が、医療的ケア区分による基本報酬を算定していない事業所でも算定可能となりました。
医療的ケア児を送迎する場合は、運転手に加え、看護職員等の同乗が必要です。喀痰吸引等のみが必要な児童の場合には、認定特定行為業務従事者の同乗でも要件を満たせる扱いです。
2-3. 一定条件2 ― 中重度医療的ケア児:+片道80単位
医療的ケアスコアが16点以上の中重度医療的ケア児を送迎する場合、片道80単位の上乗せとなります。一定条件1と一定条件2は同じ児童に重ねて算定するものではなく、医療的ケアスコアの評価結果に応じてどちらの区分で算定するかを判断します。
中重度医療的ケア児の送迎にあたっては、医療濃度を踏まえた安全な送迎に必要な体制を確保することが要件となります。
3. 重心型 ― 主として重症心身障害児を支援する事業所での送迎加算
3-1. 重症心身障害児・医療的ケア児:片道40単位
重心型事業所が重症心身障害児または医療的ケア児を送迎する場合、片道40単位を算定します。重症心身障害児の場合は運転手に加え、基準により置くべき直接支援業務に従事する職員の同乗が必要です。医療的ケア児の場合は、運転手に加え看護職員等の同乗が必要となります。
3-2. 中重度医療的ケア児:片道80単位
医療的ケアスコアが16点以上の中重度医療的ケア児を送迎する場合は、片道80単位を算定します。3-1の40単位との重複算定はできず、医療的ケアスコアの評価結果に応じて区分を選びます。
4. 同乗職員の要件 ― 児童特有の安全配慮
児童向けの送迎加算は、児童の状態に応じて同乗職員の要件が定められています。
- 重症心身障害児 ― 運転手に加え、基準により置くべき直接支援業務に従事する職員の同乗
- 医療的ケア児 ― 運転手に加え、看護職員等の同乗。喀痰吸引等のみが必要な児童の場合は、認定特定行為業務従事者でも対応可
- 中重度医療的ケア児(スコア16点以上)― 運転手に加え、看護職員の同乗、および医療濃度を踏まえた安全な送迎に必要な体制
直接支援業務に従事する職員の人数や、看護職員の配置状況によって、同時に対応できる児童の人数が決まります。送迎ルートを設計する段階で、必要な職員配置をシフトに落とし込んでおきます。
5. 算定で迷いやすい論点 ― 令和6年改定のQ&Aから
5-1. 重症心身障害児が医療的ケア児でもある場合
医療的ケアを必要とする重症心身障害児に対して、看護職員が付き添って送迎を行った場合は、重症心身障害児の区分(40単位)と医療的ケア児の区分(40単位)を重ねて算定することはできません。医療的ケア児の区分のみを算定する取扱いです。医療濃度の高い児童であれば、中重度医療的ケア児の区分(80単位)を算定することになります。
5-2. 看護職員が同乗しない場合の取扱い
医療的ケア児の送迎であっても、児童の状態や必要な医療的ケアの内容によっては、看護職員等の付き添いがなくても安全に送迎できる場合があります。この場合、付き添いを必須とまでは求められていません。ただし、看護職員等が同乗しない送迎については、医療的ケア児の区分による加算は算定できない取扱いです。加算を算定するか付き添いを省略するかの判断は、児童の状態に即して整理しておきます。
5-3. 医療的ケアスコア16点以上の確認方法
中重度医療的ケア児の区分(80単位)を算定するには、医療的ケアスコアが16点以上であることの確認が必要です。受給者証にスコアの点数が記載されていれば、それに基づいて算定できます。受給者証への記載が間に合っていない期間については、主治医による医療的ケアスコアの判定書類で16点以上が確認できる場合、その書類を事業所で保管しておくことで対応できる取扱いです。
6. 行政手続きと送迎場所の留意点
6-1. 市町村判定と都道府県届出
医療的ケア児や重症心身障害児の区分で送迎加算を算定する場合、市町村による児の判定が前提となります。あわせて、加算の体制を整備した事業所として、都道府県への基準適合の届出が必要です。算定開始までに、判定と届出の双方が整っているかを確認します。
6-2. 送迎の場所 ― 保護者の同意で特定場所も可
送迎の場所は、原則として児童の居宅や学校等です。保護者と事前に合意のうえで特定の場所を定めれば、居宅・学校等以外の場所との送迎も加算の対象になります。たとえば祖父母宅や学童保育施設など、児童の生活実態に合わせて特定する場面が想定されます。事前の同意と場所の特定がない送迎は、加算の対象外として整理されます。
6-3. 児童ならではの自立能力への配慮
送迎の必要性は、通所する道路の安全性、児童の年齢・能力、公共交通機関の有無など、地域や児童の状況を総合的に踏まえて判断するものとされています。とくに自ら通所することが可能な就学児については、送迎を一律に提供することで自立能力の獲得を妨げないよう配慮することが求められます。
7. 算定前に確認しておきたい3点
- 自所が一般型・重心型のどちらの類型に当たるかを確認する ― 算定する加算の選択肢が変わります
- 医療的ケア児・重症心身障害児の判定と都道府県届出が整っているかを確認する ― 算定開始までに必要な手続きです
- 同乗する職員(看護職員・直接支援業務に従事する職員・認定特定行為業務従事者)の配置をシフト上で確保する ― 同乗要件を満たせない日は算定対象外になります
8. まとめ
児童向けの送迎加算は、事業所の類型と児童の状態(重症心身障害児・医療的ケア児・中重度医療的ケア児)の組み合わせで単位数が変わる構造です。令和6年改定で医療濃度を踏まえた評価が新設され、これまで算定対象外だった事業所でも医療的ケア児の送迎加算が算定可能になっています。市町村判定と都道府県届出の状況、同乗職員のシフトを整えたうえで、児童の状態に即して区分を選んでいくことが、年度を通じた安定算定につながると考えられます。
行政書士杉山翔事務所では、児童発達支援・放課後等デイサービスにおける送迎加算の届出書類や、医療的ケア児・重症心身障害児への対応に関するご相談を承っております。「医療的ケア児の判定と都道府県届出の進め方を確認したい」「同乗職員の体制を整える順番を相談したい」といった段階のご相談も承っています。
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※ 本記事は厚生労働省告示「障害福祉サービス費等の算定に関する基準」別表第1の11(児童発達支援)・別表第3の9(放課後等デイサービス)、ならびに施設基準告示の関連条項、および令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援)に関するQ&A(VOL.1 令和6年3月29日 問22・問23、VOL.3 令和6年5月2日 問7)、および「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(障害児支援)」(厚生労働省 令和6年4月)を参照して作成しています。要件・単位数の最新の取扱いや、自治体ごとの運用は、厚生労働省および各都道府県・市区町村の発表をご確認ください。