相続手続きを始めると、銀行でも法務局でも、まず求められるのが「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍」です。これがそろわないと、相続人が誰なのかを法的に確定できず、預貯金の払戻しも不動産の名義変更も先に進みません。相続の最初の関門が、この戸籍集めだといってよいでしょう。

ところが、いざ取りかかると「1通取れば終わりではない」「どこの役所に請求すればいいか分からない」と、多くの方がつまずきます。本記事では、なぜ何通も必要なのか、どう集めるのか、そして行政書士に任せるとどうなるのかを整理します。

1. なぜ「出生から死亡まで」の戸籍が必要なのか

相続では、亡くなった方(被相続人)の相続人を一人残らず確定させる必要があります。たとえば前の配偶者との間に子がいた、認知した子がいたといった事情は、現在の戸籍だけを見ても分かりません。これらは過去の戸籍をたどってはじめて確認できます。

そのため、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて連続してそろえ、「この方の子はこの人たちで全員です」と証明できる状態にします。金融機関や法務局は、この一連の戸籍によって相続人の範囲を確認します。一通でも抜けがあると、手続きを受け付けてもらえません。

2. 戸籍は一通では足りない

戸籍は、その人の一生分が一枚に収まっているわけではありません。次のような理由で、複数の戸籍に分かれているのが普通です。

  • 結婚により、親の戸籍から抜けて新しい戸籍が作られる
  • 本籍地を移す「転籍」をすると、その都度新しい戸籍になる
  • 法律改正による「改製」で、古い様式の戸籍(改製原戸籍)が作り直される

このため、一人分の戸籍をそろえるだけでも、複数の自治体に請求が必要になることが珍しくありません。転籍を何度も重ねている方の場合、戸籍の収集だけで1〜2か月かかることもあります。さらに、配偶者や子など相続人側の現在の戸籍も別途必要になります。

3. 戸籍を集める三つの方法

集め方には、大きく三つのルートがあります。

3-1. 本籍地の役所に一通ずつ請求する

最も基本的な方法が、戸籍のある(あった)市区町村に直接請求する方法です。窓口でも郵送でも請求できますが、郵送の場合は申請書・本人確認書類のコピー・手数料分の定額小為替・返信用封筒を用意します。一つ前の本籍地が記載されているので、それをたどって次の役所へ請求する、という作業を出生までさかのぼって繰り返します。

3-2. 広域交付制度を使う(2024年3月〜)

2024年3月から始まった「広域交付制度」により、本籍地以外の市区町村の窓口でも、まとめて戸籍を請求できるようになりました。複数の自治体にまたがる戸籍を、最寄りの一か所の窓口で受け取れるため、負担が大きく軽くなりました。

ただし注意点があります。請求できるのは本人・配偶者・直系の親や子などに限られること、郵送や代理人による請求はできず本人が窓口に出向く必要があること、そして一部のコンピュータ化されていない古い戸籍は対象外になることです。便利な制度ですが、すべてのケースで完結するわけではありません。

3-3. 行政書士の職務上請求に任せる

行政書士には、受任した業務を進めるために必要な範囲で、依頼者に代わって第三者の戸籍や住民票を直接請求できる「職務上請求」という制度が認められています(戸籍法、住民基本台帳法)。

相続手続きのために戸籍を集めることは、この業務にあたります。ご依頼いただければ、相続人ご自身が役所ごとに申請書や委任状を用意して何度もやりとりする手間をかけずに、出生から死亡までの戸籍と相続人の戸籍を、行政書士がまとめて取り寄せます。広域交付制度のように本人が窓口へ出向く必要もありません。「平日に役所へ行く時間が取れない」「どこに何を請求すればいいか分からない」という場合の、現実的な選択肢になります。

4. 集めた戸籍は、次の手続きに使い回せる

苦労して集めた戸籍は、銀行・証券・法務局・税務署と、相続手続きのたびに提出を求められます。そのたびに分厚い戸籍の束を出し入れするのは大変です。

そこで、集めた戸籍をもとに「法定相続情報一覧図」を一度作っておくと、以降の手続きでは戸籍の束の代わりにこの一覧図の写し一枚で足りるようになります。法務局が無料で交付してくれる制度ですので、戸籍をそろえたら次に検討したい一手です。

5. まとめ

相続での戸籍集めは、「出生から死亡まで」を連続してそろえ、相続人を一人残らず確定させるための作業です。戸籍は改製・転籍で複数に分かれているため、一通では足りず、複数の自治体への請求が必要になります。

集め方は、本籍地への個別請求、2024年から始まった広域交付制度、そして行政書士の職務上請求による代行の三つ。ご自身で進めることもできますが、転籍が多い・平日に時間が取れない・相続人が多いといった場合は、専門家に任せてしまうのも一つの方法です。

行政書士杉山翔事務所では、職務上請求による戸籍の収集と、それをもとにした相続関係の整理・法定相続情報一覧図の作成までを承っております。「戸籍を集め始めたが、どこまでさかのぼればいいか分からなくなった」という途中段階でのご相談も歓迎しております。

ご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

※ 本記事は戸籍法、住民基本台帳法を参照して作成しています。広域交付制度の対象範囲や各役所の取扱いは個別に異なりますので、具体的な請求方法は各窓口でご確認ください。