ご家族が亡くなった直後は、悲しみの中で次々と手続きが押し寄せます。「何から手をつければいいのか」「いつまでに何をしなければいけないのか」が分からないまま、葬儀の段取り、役所への届出、年金や銀行の手続き、そして相続手続きへと進んでいくことになります。

ひとつひとつの手続きは、それほど難しいものではありません。ただ、期限のあるものが複数並行して走るため、全体像を最初に押さえておくことが、結果として一番の近道になります。本記事では、ご逝去直後から相続手続きが落ち着くまでの一般的な流れと、それぞれにかかる期間の目安を整理します。

1. ご逝去直後 〜 1週間以内

最初の数日は、葬儀社の方のサポートを受けながら進む方がほとんどです。

死亡が確認されると、医師から「死亡診断書」が交付されます。これと一体になった「死亡届」を、死亡を知った日から7日以内に市区町村役場へ提出します(戸籍法86条)。あわせて「火葬許可申請」を行い、火葬許可証の交付を受けることで火葬・埋葬の手続きへ進みます。

通夜・葬儀・火葬・初七日法要までの一連の流れは、おおむね1週間程度で区切りがつきます。この時期は、葬儀社が役所への届出を代行してくれることも多く、ご家族が手を動かす場面は限られます。

ただし、死亡診断書はこのあとの年金・保険・銀行の手続きで何度もコピーを求められます。原本は提出してしまうことも多いため、コピーを5〜10枚ほど取っておくと、あとの手続きが楽になります。

2. 2週間以内に集中する届出

葬儀が一段落すると、役所関連の届出が一気に押し寄せます。

  • 世帯主変更届(亡くなった方が世帯主だった場合、14日以内)
  • 国民健康保険・後期高齢者医療制度の資格喪失届(14日以内)
  • 介護保険の資格喪失届(14日以内)
  • 年金受給権者死亡届:厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内

これらは「届け出るだけ」のものが中心で、所要時間自体は窓口で30分程度ということも珍しくありません。ただし市区町村役場・年金事務所・健康保険組合など、提出先が複数に分かれます。一度の役所訪問でまとめて済ませるために、必要書類を事前にリストアップしておくと効率的です。

公共料金・携帯電話・各種サブスクリプションの名義変更や解約も、このタイミングで少しずつ進めていくとよいでしょう。

3. 3か月以内:相続するかどうかを決める期間

ここからが、いわゆる「相続手続き」の本番です。

民法915条により、相続放棄・限定承認は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。この3か月の間に、相続するかどうかを判断するための材料を揃えることになります。

3-1. 遺言書の有無を確認する

まず、遺言書があるかどうかを確認します。

自筆証書遺言が見つかった場合、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です(法務局の保管制度を利用していた場合は検認不要)。公正証書遺言の場合は検認は不要で、最寄りの公証役場で遺言検索が可能です。

3-2. 相続人を確定する(戸籍の収集)

「誰が相続人なのか」を法的に確定させるため、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべて遡って収集します。本籍地を移されている方や、転籍を重ねている方の場合、複数の自治体に請求を出すことになり、戸籍の収集だけで1〜2か月かかることもあります。

2024年3月から始まった「戸籍の広域交付制度」により、最寄りの市区町村役場で本籍地以外の戸籍も請求できるようになりましたが、対応範囲には一定の条件があります。

3-3. 遺産を調査する

預貯金・有価証券・不動産・生命保険・自動車・負債などを洗い出します。通帳や金融機関からの郵便物、固定資産税の納税通知書、保険証券などが手がかりになります。

借金や連帯保証が判明することもあるため、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含めた全体像を3か月以内に把握することが、相続放棄を選択肢として残すうえで重要です。

4. 4か月以内:所得税の準確定申告

亡くなった方が確定申告をしていた場合、1月1日から亡くなった日までの所得について、相続人が代わりに申告・納税を行います。これを「準確定申告」と呼び、相続開始を知った日の翌日から4か月以内が期限です(所得税法124条・125条)。

事業をされていた方、不動産収入があった方、医療費控除を受ける必要がある方などが対象になります。具体的な要否や申告内容は税理士の領分となるため、該当しそうな場合は早めに税理士へご相談いただくのが安心です。

5. 10か月以内:遺産分割と相続税

相続人と遺産が確定したら、遺産分割協議に進みます。法定相続分どおりに分ける場合でも、預貯金の解約や名義変更には「遺産分割協議書」(相続人全員の署名・実印・印鑑証明書付き)が求められることがほとんどです。

預貯金の解約・名義変更は、金融機関ごとに必要書類が少しずつ異なり、書類提出から手続き完了までに2週間〜2か月程度かかるのが一般的です。複数の金融機関に口座があると、この期間がさらに伸びることがあります。

相続税の申告・納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条)。基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える遺産がある場合に申告が必要となります。相続税申告は税理士の業務領域ですので、対象になりそうな場合は早めに税理士へ相談されることをお勧めします。

6. 不動産の相続登記(3年以内・義務化)

不動産の名義変更(相続登記)は、2024年4月1日から義務化されました(不動産登記法76条の2)。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をする必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。

実務上は、遺産分割協議書・戸籍一式・住民票・固定資産評価証明書などを揃え、法務局へ申請します。書類が揃ってから登記完了までは、1か月前後が一般的です。

登記申請は司法書士の業務領域ですので、書類が整った段階で司法書士へ引き継ぐ流れになります。

7. 全体としてどのくらいかかるか

期間の目安をまとめると、おおよそ次のようになります。

  • 戸籍収集・相続人確定:1〜2か月
  • 遺産調査・遺産分割協議:1〜3か月
  • 預貯金等の名義変更:金融機関ごとに2週間〜2か月
  • 相続登記:書類が揃ってから1か月前後

相続税の申告が不要で、相続人間の話し合いがスムーズに進むケースであれば、全体として4〜6か月ほどで一通り落ち着くことが多いと考えられます。相続税の申告が必要な場合は、申告期限の10か月が一つの区切りになります。

一方で、相続人が多い・連絡の取れない方がいる・遺産分割で意見が分かれるといった事情があると、1年を超えることも珍しくありません。「ひとつひとつの手続きは難しくないが、並行して走る手続きが多い」のが相続手続きの特徴です。

8. まとめ

相続が発生してからの手続きは、ご逝去直後の届出、3か月以内の相続判断、4か月以内の準確定申告、10か月以内の相続税申告、そして3年以内の相続登記という形で、複数の期限が段階的に訪れます。

期限のあるものを取りこぼさないためには、最初に全体像を把握し、どの手続きをいつまでに進めるかをご家族で共有しておくことが何より大切です。税理士・司法書士・行政書士など、それぞれの専門家が関わる場面も自然と出てきますので、最初の整理だけでも早めに着手しておくと、その後の判断がぐっと楽になります。

行政書士杉山翔事務所では、相続手続きの全体整理、戸籍収集、遺産分割協議書の作成、遺言書の作成支援などのご相談を承っております。「まず何から手をつければいいか相談したい」という段階のご相談も歓迎いたします。税理士・司法書士の領域については、必要に応じて連携してご案内いたします。

ご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

※ 本記事は戸籍法、民法、所得税法、相続税法、不動産登記法を参照して作成しています。手続きの詳細・必要書類は自治体・金融機関・法務局により異なりますので、個別の手続きについては各窓口でご確認ください。